有機・無農薬の家庭菜園を本格的に始めてから約14年が経過する。当初畑に施す堆肥として
(1)EM生ゴミ堆肥
家庭で発生する生ゴミをEM菌で発酵させた堆肥(C/N比10程度)。低C/N比堆肥でハンドリング性が悪いため窒素を必要とする葉物野菜を中心に施した。
野菜の横に溝を掘りバケツの生ゴミ堆肥を投入し覆土する。結構面倒菜作業で、カラスや野良猫に掘り返されることが多かった。
(2)落葉堆肥
公園の落葉を水と米糠で半年以上かけて発酵させた堆肥(C/N比23程度)。高C/N比堆肥なのでハンドリング性も良いので、野菜全般に施し土壌の物理性や生物活性を改良するために施す。
メインの堆肥として製造し現在も続け毎年1m2当たり2kg程度を施している。
(3)籾殻堆肥
籾殻を生ゴミ堆肥、米糠で半年以上かけて発酵させた堆肥。ケイ酸を含むため、主としてケイ酸を必要とするネギ類に施す。
の3つの堆肥を使用してきた。
(4)生ゴミ堆肥の問題点
以下の問題点が発生した。
①畑に施肥する作業が面倒で、カラスや野良猫に掘り返されることが多かった。
➁施肥してから腐植するまで相当な時間を要した(特に冬場)。
③生ゴミ堆肥の品質の振れが大きかった。
④野菜撤収時に発生する残渣は生ゴミ堆肥を施す際に一緒に鋤き込んできた。ミミズが発生しモグラ被害が深刻となる。
⑤土壌中の害虫発生を減らすためには、野菜撤収時に発生する残渣は畑に埋めないで、堆肥化する必要性に迫られた。
➅落花生と小麦の輪作で大量の麦藁が発生する。敷き藁後の麦藁は稲藁と異なり、土壌中でなかなか腐植しない。鋤き込まないで堆肥化する必要性が生じた。
このような問題点を解決するため、麦藁や野菜残渣を生ゴミ堆肥で発酵し堆肥化することとした。適当な名称が見当たらなかったので、「グリーン堆肥」と呼ぶこととした。
グリーン堆肥はEM生ゴミ堆肥と同様低C/N比の堆肥であった。このため籾殻を投入し高C/N比と易ハンドリング性を達成した。落葉堆肥と同様に取り扱うことが出来る。
完熟グリーン堆肥は、窒素肥料を含む堆肥としてとして野菜全般に施すことにしている。特に葉物野菜に多く使用している。
2.製造法
野菜残渣を主原料とし麦藁、籾殻、EM生ゴミ堆肥、少量の米糠(発酵剤)を加えて発酵させた堆肥である。原料が多岐にわたるため堆肥の窒素、燐酸、カリ組成はハッキリしない。生ゴミ堆肥並みと考えている。
(1)原料
敷藁に用いる麦藁や野菜残渣(スナップエンドウ、カボチャ、キュウリ、スイカ、マクワウリ、サツマイモ、キャベツ、白菜、ダイコンなど)などを原料とする。
蔓性のスナップエンドウ、カボチャ、キュウリ、スイカ、マクワウリ、サツマイモなどは鎌で切り刻む。発酵を早くする、ハンドリング性を良くするため、野菜残渣も出来るだけ細かく切り刻む。
トマトやナス、ピーマン、アスパラガスの枝葉はウイルス病を蔓延させる危険性があるので用いない。発酵剤としてEM生ゴミ堆肥と米糠を少量添加する。
(2)製造法
麦藁や野菜残渣は空き地に積んでおく。原料がある程度集まったら堆肥場に籾殻を敷き、麦藁や野菜残渣を投入し米糠を散布する。 その上にEM生ゴミ堆肥を投入し3本鍬で広げる。
更に野菜残査を投入し米糠を散布する。この操作を繰り返し、サンドイッチ状に積んで行く。摘んだ山をブルーシートで覆う。 製造後1カ月程度経過したら、堆肥の山を3本鍬で崩し切り返し作業を行う。
堆肥内部の温度が上がっていない場合は、米糠を散布する。 2~3カ月後に2回目の切り返しを行う。麦藁や野菜の蔓が完全に発酵分解した時点を完熟グリーン堆肥としている。
3.グリーン堆肥の使用法
グリーン堆肥は落葉堆肥に比べ窒素分の多い堆肥と考えている。従って土壌の物理性改良効果よりも生物活性効果のある窒素含有堆肥として使用している。
(1)葉物野菜
キャベツ、ブロッコリー、シュンギク、ホウレンソウ、小松菜、白菜、モロヘイヤ、ニラなどの元肥として落葉堆肥と等量ブレンドして使用している。
(2)果采
キュウリ、ナス、ピーマン、ゴーヤ、マクワウリ、ズッキーニ、オクラ、唐辛子の元肥として落葉堆肥とブレンド(約30%)して使用している。
(3)豆類
スナップエンドウ、そら豆、インゲンなどの元肥として落葉堆肥とブレンド(約30%)して使用している。スナップエンドウとそら豆には追肥(置き肥)としても用いている。
(4)イモ類
ヤマイモ、コンニャクイモは種イモと接触しない施肥方法で元肥として落葉堆肥とブレンド(約30%)して使用している。
(5)使用していない野菜
ジャガイモ、サツマイモと根野菜(ダイコン、ニンジン、ゴボウ、スティックダイコン)には元肥として使用していない。
4.グリーン堆肥の効果
以下の効果が確認されている。
①堆肥の施肥作業が大幅に改善される。施肥後の腐植時間も短縮される。
➁カラスや野良猫の被害がほとんど無くなる。モグラ被害も少なくなる。
③グリーン堆肥堆肥のロットが大きくなり、品質の振れが少なくなる。
現在のグリーン堆肥製造量は約200kg(落葉堆肥の半分)となっている。完熟していないグリーン堆肥を用いることもあるが障害は起きていない。
今後は冬季の発酵速度の向上などを図りたい(2017年10月17日改正)。