肥料の基礎:苦土石灰

どの家庭菜園でも種播きをする畑の準備として苦土石灰を散布することから始める人が多い。苦土石灰散布の目的の一つに、土壌酸性度(pH)の中和があげられる。

今回、苦土石灰とはどんなものかについて報告したい。

1.苦土石灰とは

苦土石灰の主成分は炭酸マグネシウム(Mg(CO3)2)と炭酸カルシウム(Ca(CO3)2)を含む無機化合物である。 天然のドロマイト原石を乾燥、粗粉砕、微粉砕、分級して製造される

ドロマイト原石は国内では栃木県葛生や岐阜県美山などで産出される。 栃木県葛産のドロマイトの化学組成は、酸化マグネシウム(MgO)として18.5重量%、酸化カルシウム(CaO)として33.8重量%である。

2.苦土石灰は無機肥料

苦土石灰は天然の無機肥料で有機肥料ではない。但し、農林水産省は日本農林規格(有機JAS)で有機農産物としての使用を認めている。 「炭酸カルシウム、天然物質又は化学的処理を行っていない天然物質に由来するもの(苦土炭酸カルシウムを含む)」は使用出来ると告示している。

粒状苦土石灰は、造粒剤としてリグニンなどが用いられている。我が菜園では、少しでも環境に優しい粉状品を使用している。

3.苦土石灰の効能

苦土石灰の主な効能は

①ミネラル肥料(マグネシウム、カルシウム)

➁土壌酸性度の中和 の2つが挙げられる。

肥料の3要素は窒素、リン酸、カリ。これに続く4要素が「カルシウム」、5要素が「マグネシウム」である。マグネシウムは葉緑素の構成成分で光合成を促進する。

マグネシウムは植物体内に0.1~0.7重量%存在し、葉緑素(クロロフィル:C55H72N4Mg)の主要構成成分となっている。 葉緑素は光合成に関与し、生育中期から後期にかけてマグネシウムの消耗が激しくなる。マグネシウムが不足すると生理障害や病害、連作障害などの弊害が生じる。

マグネシウムは植物体内で移動可能なため、欠乏症は下位葉から現れる。キュウリやナス、トマトの葉脈間が黄色くなる。

2番目の中和作用は、消石灰(水酸化カルシウム:Ca(OH)2)に比べ弱いのが特徴である。

4.苦土石灰の使用状況

「有機・無農薬栽培」をスローガンにしているが、天然物や天然物を化学処理していないものを肥料として使用している。

堆肥を大量に施肥し、カルシウムやマグネシウムなどのミネラル分を補給することは可能であるが堆肥製造設備も限られているため天然物を使用している。

我が菜園では落葉堆肥を1m当たり年間2kg、グリーン堆肥を1kg施しているので、ミネラル肥料としての苦土石灰は少なめにしている。
(1)苦土石灰

通常の施肥量は1m当たり50~200g。葉物野菜などのマグネシウムの補給を中心として施肥している。施肥量は1m当たり100g程度。

またホウレンソウやアスパラガスなどの土壌中和剤として用いる時は1m当たり150g程度施している。 特殊や用途として苦土石灰上澄み液(1%の苦土石灰液、上澄み液はpH8以上のアルカリ性)を野菜の葉面に散布している。

白菜・ダイコンの軟腐病、キュウリの褐斑病・ベト病・ウドン粉病、トマトの葉カビ病、イチゴの炭そ病、エンドウのウドン粉病予防として葉面散布している。

(2)その他のミネラル肥料

 

①消石灰

通常の施肥量は1m当たり10~200g。当初は化学肥料栽培の畑であったので中和に使用したが現在は使用していない。 ➁草木灰

通常の施肥量は1m当たり50~300g。微量ミネラル(カルシウム、マグネシウムなど)の補給やリン酸、カリ肥料として施している。

5.今後の課題

我が菜園では落葉堆肥とグリーン堆肥を多く施している(年間作付面積1m当たり約3kg)。またアルカリ性肥料の発酵鶏糞や草木灰をかなり使用している。

このためほとんどの作物でミネラル欠乏症は発生していない。但し畑の土壌pHは6.5~6.8と中性に近い酸性度となっている。

このためジャガイモのそうか病(肌に痣ができる)に悩まされている。現在畑を酸性にする検討を行なっている(2017年10月22日改正)。

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