オクラの害虫には、幼苗を食害するネキリムシ、葉を食害するワタノメイガやフタトガリコヤガの幼虫、オクラの蕾や果実を吸汁加害するカメムシがいる。
特に畑に直播きする場合のネキリムシ、オクラの蕾や果実を吸汁加害するカメムシは栽培上特に注意が必要な害虫である。
これ等の害虫の生態と防虫法について取り纏めた。
1.茎葉の食害
茎葉を食べる害虫にはネキリムシ、ワタノメイガやフタトガリコヤガの幼虫などがいる。これ等の害虫は防虫剤(ニンニク・唐辛子・木酢液)を散布しても効果は少ない。
(1)害虫の種類と生態
①ネキリムシ
ネキリムシは「カブラヤガ、タマナヤガ、シロモンヤガ、センモンヤガなど茎を食害するヤガ類(夜蛾)の幼虫の総称で、「ネキリムシ(根切り虫)」と呼ばれている。
(土の中で棲息するネキリムシ)
体長40mmほどのイモムシ状の幼虫で、幼虫の状態で土の中を越冬する。発生時期は5月~10月と暖かい時期に年3~4回発生する。
卵は葉に産み付けられ、ふ化直後は葉を食害して大きくなる。大きくなると昼間は土の中に隠れ、夜間に茎を食害する。苗を地ぎわで噛み切り横倒しにするため苗は枯れてしまう。
ネキリムシは単独なので、被害もさほど目立ないのが発見しにくいのが厄介である。 ➁ワタノメイガの幼虫 若齢幼虫の色は乳白色。体長2cmほどの老齢幼虫になると、体色が淡い緑色で、頭が黒くなる。初め葉裏に糸を張って寄生し食害する。
その後、葉を筒状に巻きその内側に潜み食害する。葉を開くと幼虫が活発に動き、身を守るために転げ落ちる。
幼虫は一つの巻葉内に留まることはなく、発育が進むと新しい巻葉をつくり、食害する。発生が多いときにはほとんどの葉が巻き、葉が食いつくされる。
8~9月に発生が多くなることから、この時期に栽培する露地栽培で発生が多い。オクラでの発生は7月頃からみられはじめ、8~9月に多くなる。
③フタトガリコヤガの幼虫
蛹で越冬し、羽化した成虫が5月頃から飛来してオクラの成長点付近の葉裏に産卵し、繁殖する。幼虫は体長3~4cmの柔らかな棘状の毛をまばらにもつイモムシ。
幼齢期は淡緑色の体色をしており、老熟すると緑の地色に黄色の縦線と黒色(または赤色)の斑点が目立つようになる。
幼虫は6月~7月と9月~10月に発生するが、9月~10月の発生の方が多い。また、高温多照の年に発生が多い傾向がある。
(2)害虫対策 以下の対策をしている。
①ネキリムシ
オクラのネキリムシ対策として
・畑に雑草のハコベを数ヶ所置き、ハコベに棲みついたネキリムシを捕獲した。
・オクラを播種した周りに円筒状の紙や樹脂の筒を挿し、苗が大きくなるまで侵入を防いだ。
などを行なってきた。
現在は蜜植栽培をしているため、
・畝を金属篩で篩い、ネキリムシが居たら取り出す。
・さらに畝周りにプチプチの柵を張り巡らしている。
この方法でネキリムシの被害はほとんど無くなっている。
➁ワタノメイガの幼虫
食害被害は少ないので
・7月頃の草丈が低い時は、防虫ネットを被せて成虫の侵入、産卵を防ぐ。
・発生が少ない場合は巻かれた葉を開いて、中の虫を捕殺する。
で対応している。
③フタトガリコヤガの幼虫
食害被害は少ないので見つけ次第捕殺することにしている。
2.実の食害
ミナミアオカメムシ、ブチヒゲカメムシなどの幼虫が朔果や蕾を吸汁加害する。外見上、被害はほとんどわからないが、朔果を切断すると子実が変色したり、吸汁部が褐色に変色している。朔果の基部が加害されると内部がスポンジ状になる。
(1)カメムシの種類と生態
カメムシは多食性昆虫で、主に4月から10月にかけて活動する。成虫は初夏から植物の葉などに円筒形の卵を塊で産み着ける。
(オクラを食害するカメムシ)
卵から孵化する幼虫の体形や模様は成虫と異なり、成長にともなって変化する。幼虫は成虫と同じ形だが、模様が異なる。蛹にならずに羽化する。
7月から9月にかけて新しい成虫が1回から数回発生し、多くの種類が成虫で冬を越す。カメムシは全て成虫で越冬する。 日当たりのよい草むらや落葉の間などで越冬するが、オクラを食害するアオクサカメムシは常緑植物の葉の間や茂みの中などで越を越す。
ミナミアオカメムシはシュロやキミガヨランで成虫態で越冬する。越冬成虫は4月頃から活動を開始し、ジャガイモやイタリアンライグラス、ムギ及びイネ科雑草などで世代を経過する。
幼虫は5齢を経過し、1カ月程度で成虫となる。年間に4~5世代経過する。ブチヒゲカメムシは成虫で越冬し、越冬後はきく科やまめ科植物に移り繁殖する。
これらの個体がオクラに飛来してくる。両種ともにオクラでは8月中旬以降に発生が多くなってくる。
(2)カメムシ対策
4.防除方法
防虫剤の効果は少なく、完全を期するには防虫ネットで囲うしかない。現状の対策を以下に記す。
①防虫ネットで囲う
オクラは草丈が長く防虫ネットで囲うにはかなりの設備が必要となる。過去に1度実施したが現在は行なっていない。
➁防虫剤散布と補殺
防虫剤(ニンニク・唐辛子・木酢液)の効果は認められるが、その効果は短い(数時間~半日程度)。見つけ次第手で補殺しているが、一網打尽には程遠い。 補殺は素手で行う。カメムシは悪臭を放ち、悪臭が指に付く。補殺後手や指に洗剤をつけて洗浄する。
③成虫の繁殖防止
冬の間成虫がひそむ休耕畑の雑草や落ち葉などの清掃をしている。(2017年10月5日作成)。