油粕はアブラナなどの農作物から油を搾り取った粕である。原料として菜種、大豆、綿実、落花生、胡麻、米糠、ひまし油、コーン胚芽、カポックなどがある。
菜種脂粕(窒素5%、リン2%、カリ1%)や大豆粕(窒素7%、りん1%、カリ1%)は窒素分を4~7%含むため窒素肥料に用いられている。
野菜の有機栽培で使用される菜種油粕について製造法や特徴、製造法、特性、使用法などについて記す。
1.菜種油粕の特徴
菜種油粕(以下油粕と称す)の特徴を以下に列記する。
(1)遅効性有機質肥料として古くから使用され、有機肥料の中で最も生産量が多い。
(2)肥効は化学肥料より劣り窒素の場合、化学肥料の60~70%程度である。
(3)代表的な成分組成は窒素5%、リン2%、カリ1%。カルシウム、マグネシウムが少ない。
(4)施肥量が少なく発酵分解量も多いため、土壌に与える影響が少ない。
(5)土壌の物理性を改善し、土壌微生物を増やす働きが大きい。
(6)多量に施肥するとアンモニアや亜硝酸ガスが発生し、作物に被害を与える。 油粕は優れた有機質肥料であるが、その特徴や特性を理解して使いこなすことが必要となる。
2.菜種油粕の製造法
油粕は菜種を熱して圧搾し菜種油を採った残り粕である。
その製造法は
①搾油機で圧搾し菜種油を採取後、溶剤(ノルマルヘキサン)で油を抽出し残渣を整粒する。
➁加熱、或いは非加熱菜種を搾油機で圧搾し菜種油を採取する。残渣を回収する。①の溶剤抽出法に比べ脂分が多い。 ①の溶剤抽出法が工業的に行われ市場に流通している。➁は日本の伝統的製造法であるが市場に流通している量は少ない。
3.菜種油粕の特性
油粕の主な要特性について記す。
(1)成分組成
代表的な菜種油粕の成分組成は窒素5%、リン2%、カリ1%でリン酸とカリ分が少ない肥料である。窒素形態は主にタンパク態であり、肥効も化学肥料より遅い。
堆肥や発酵鶏糞などの有機肥料を使った有機栽培では、生育に必要な窒素供給量を得るために有機質肥料の施用量が過剰となる。
その結果、塩基類やリン酸が土壌中に蓄積して養分バランスが悪化する。リン酸やカリ含有量の多い肥料と組合せて使うと、土壌中の養分バランスを適正に保つことができる。
(2)発酵分解速度
油粕の窒素無機化は、全窒素の55~70%である。有機肥料の窒素分解速度(無機化速度)は有機物のC/N比で決まり、C/N比が低い程分解速度は速くなる。
代表的有機肥料の発酵分解速度は、魚粕(C/N比4.5)>大豆粕(C/N比5.8)>菜種油粕(C/N比5~7)の順となる。菜種油粕のC/N比は5~7、米糠油粕は14~15であるため窒素無機化速度は菜種油粕が速い。
油粕中の油脂含有量も窒素無機化速度に影響し、脱脂粕は無脱脂粕より窒素無機化速度が速くなる。その結果肥効も速い。 また、土壌中における微生物の活性度は、低温より高温の方が旺盛となる。
このため、窒素無機化速度は冬季より気温の高い夏季の方が速くなる。 ・10~25℃の無機化速度は温度の影響を強く受け、高温ほど速くなる。
・25~30℃では温度の影響を余り受けない。
地温30℃における油粕の窒素分解は5日までの間に急激に起こり、その後徐々に進み、40日位で最大となると言われている。 油粕の肥効は遅効性なので、追肥ではなく元肥に利用される。
(3)作物障害
油粕は、
①施用直後に発芽阻害を起こす。
➁多肥でアンモニアや亜硝酸ガスのガス害を引き起こす。
③多肥にすると種バエなどの害虫を助長する。
などが知られている。 このため野菜に施肥する場合 ①種子や苗の根に直接接触しないように施肥する。 ➁層状に施肥する場合は、間土や覆土をする。 などを行う必要がある。
4.菜種油粕の使用法
油粕は元肥や追肥として畑に施す。肥料障害などを防ぐために「EMボカシ肥料」や「油粕液体肥料」に変換して施している。
(1)元肥
生の油粕は生育期間の長い野菜に施している。ナス、ピーマン、キュウリ、唐辛子、トウモロコシ、キャベツ、ブロッコリー、シュンギク、パセリ、玉ネギなどがある。
元肥は落葉堆肥(またはグリーン堆肥)と一緒に施し、施肥後2~3週間経過してから播種や定植をすることにしている。 また、施肥量が多く作物障害が発生しそうな場合は、EMボカシ肥料を施している。
(2)追肥
生育期間の長い葉物野菜の追肥に施している。ナスやピーマン、キャベツ、ブロッコリー、シュンギク、モロヘイヤ、ゴーヤなどに施している。最近は油粕液肥を使用する頻度が多い。
油粕の肥効は遅効性なので、生育期間の短い野菜や即効性を必要とする場合は油粕を発酵したEMボカシ肥料や液体肥料を施す。
施肥量が多い場合はEMボカシ肥料、少なくて済む場合は油粕液体肥料を3~5倍に希釈して施している(2017年10月15日作成)。